
2018.1.12に行ったサン=テグジュペリ『星の王子さま』読書会のもようです。
私も書きました。
『バラの名は。』
〈ぼくはこの世に一輪だけの、財宝のような花を持っているつもりでいたけど、ほんとうは、ただのありふれたバラだった。(中略) そんなものだけじゃ、ぼくはりっぱな王子さまにはなれないよ……〉そうして王子さまは、草の上につっぷして、泣いた。
王子さまのみならず、大人が大人であるために、なにかを持っていなければならない。地位、学歴、お金、コネ、権力、美貌など、この世で持っているもので、人は判断される。数え上げればキリがない。ありあわせの人間性だけで見知らぬ世界を生き抜くことは、太平洋を自力で泳いで渡るにひとしい。
王子さまが星に残してきた一輪のバラは、なんでもないバラだった。プライドが高くて、さみしがりやで、嘘つきで、欠点だらけのありふれた性格の女の子だった
「さようなら」王子さまは言った……
「さようなら」キツネはいった。「じゃあ秘密を教えるよ。とてもかんたんなことだ。ものごとはね、心でみなくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」
この「さようなら」は、原文では、「アデュー(adieu)」 語源は、「a Dieu (神のみもとへ)」
長いお別れ、もしくは、死ぬ前の最期の別れだ。
「お前はだれだ、俺はどうしてここにきた? あいつに会うために来た。助けるためにきた。生きてて欲しかった。誰だ、誰? 誰に会いに来たんだ? 大事な人、忘れたくない人、忘れちゃだめな人。」
この作品にも『君の名は。』と同じテーマが描かれている。
この世にアデュー(adieu)を告げる前に、私たちは、ありふれたものとの間の目に見えないも関係にもアデュー(adieu)を告げている。 いま、すでに、私たちは多くのものを忘れつつあるのかもしれない。
大事なもの、忘れちゃならないもの 忘れちゃダメなもの、一輪のバラ 、造花の水仙 相手が自分のために費やしてくれた時間、あるべき世界、人間性への責任、神との関係、意志、永遠なるもの…… 目には見えないもの……
(おわり)