色川武大『うらおもて人生録』読書会のもよう(2019 10 4)

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2019.10.4に行った色川武大『うらおもて人生録』読書会のもようです。

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私も書きました。

『前哨戦の勢い』

スクラムを組んで、押し合う日本人とアイルランド人。ラグビーW杯の二戦目だ。日本のスクラムは、押していた。あらゆる勝負事は、前哨戦でその後の流れが決まり、お互い点を取り合う華々しい中盤戦は、前哨戦の勢いが拡大したものだ。

日本はアイルランドに順調に勝った。ジャイアントキリングとは言われたが、スクラムで終始格上のアイルランドを圧倒していた。スクラムを維持できないと、ペナルティを取られて試合の流れが相手に渡ってしまう。スクラムを維持できず崩してしまう『コラプシング』という反則は、格下チームのなすところだ

よく戦隊モノの特撮の後半で、怪人が五人戦隊の攻撃に押されて、苦しくなって巨大化したあげく、五人戦隊の登場するロボットに、やっぱり成敗されるというパターンがあるが、あんな感じだ。

 

一見して小さな動きしかない前哨戦こそ、双方が全力でしのぎ合う決戦のときなのだね。(前哨戦こそ大切――の章)

 

ラグビーは、試合中に双方、殴り合いになりそうな激しいコンタクト交わしても、ホイッスルが鳴れば、ノーサイドだ。選手は、抱き合ってお互いの健闘を讃える。真剣に戦い、お互いが死力を尽くすのには、ノーサイドの精神、つまりは、試合後は愛し、愛され、相互理解を愛情にまで深めるという精神が必要だ。ラグビーには、大英帝国時代の本国と、イギリスの植民地との相互理解のために発展したという歴史的背景がある。

 

本当は俺は、池田くんみたいになりたかったんだな。どの相手とも、自分の特長一つで戦って、きわどいところまで持ちこんで、買ったり負けたり。(さて、なにから――の章)

 

ホッブスの考え出した『自然状態』は弱肉強食だ。人間は小さなときから激しい競争にさらされている。しかし、激しくしのぎ合って、なおかつ、どっちかがどっちを殲滅しないように生きるには、愛し、愛されという関係を肌で覚える必要がある。ノーサイドが、成立するのは条件というのは、愛が憎しみよりも強い感情だと信じられるかにかかっている気がする。

うんと小さいときに人を好きになって、無償の行為に近いものを肌で学ばなければ、大きくなってから学ぶのは難しいと、色川武大さんはいう。人生に勝ち負けはつきものだが、たくさん人を好きになれば、全力でしのぎ合い、手ひどく負けたにせよ、試合後は、ノーサイドで讃え合うことはできる。

劣等生でも、次も、立ち上がって、戦おうとおもえるような心得を、このエッセイは丁寧に解説してくれている。負けが続けば、誰でもふてくされて、負けが中毒して自滅してしまう。台風の中は、案外静かだというのは、そうだ。こてんぱんに、負けるのは気持ちいい。自虐の中で身をもちくずさないために、自分のハマる場所を探して、自分を独特に鍛えていく。それが、いつの時代も、生き物の生きるコツなのだと思う。適者生存。

9勝6敗で生きることの許されるラインを、探していきたい。

(おわり)

読書会の模様です。

 

  • 2020 01.20
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