読書会の進め方について (初心者編)

読書会の進め方についての記事がウェブには少ないので

私なりの読書会に関する考え方を述べておきます。

 

1.初心者におすすめの形式

『オースティンの読書会』や「オプラ・ウィンフリーの読書会」の影響で

アメリカ風の、ワインとオードブルを囲んで、

『ワイン、おしゃべり時々、恋 (笑)』とかいうタグライン(殺し文句)で

自宅やレストラン、カフェにて読書会を催すというイメージがありますが、

これは、かなり上級者向けの読書会だと思います。

 

初心者が、気軽に参加できるものではありません。

心理的プレッシャーが高まります。

会費もバカになりません。

 

また、ある程度の読書量や教養レベルが同じメンバーでないと

読書会そのものが成立せず、単なる飲み会やパーティーになってしまいます。

 

参加人数が5名以上だと、会話が分裂して、まとまりもなくなります。

読書会と聞いて参加したけど、実態は婚活パーティーだったということになりかねません。

 

それなら最初からパーティーに行ったほうがよかったな、となります。

 

そこで、読書会ビギナーにおすすめする形式を紹介します。

 

初心者が、読書会を開催する場合に参考にしたいのは、日本の伝統文学、あれです。

 

 

そうです。

 

歌会や、句会ですね。

 

日本には、歌会や、句会という

詠草を集めて、匿名で、点を入れあって批評しあう

伝統的な批評会のスタイルがあります。

 

たとえば、いまでも、宮中歌会始という形でやってますよね。

あれも、一種の読書会なのですよ。

 

歌会や句会は、司会進行(ファシリテーター)がいるということで、

みんなが平等な立場で、同じ持ち時間で批評し合えるので、

進行がスムーズになります。

 

たとえれば、順番にカラオケ歌う感じで、順番に発言します。

 

また実作した歌や句に得点を入れるので、ゲーム性もあります。

向上心を刺激します。(一等になりたいですから)

というわけで、初心者の読書会は

歌会や、句会の形式ではじめることをおすすめします。

 

 

かくいう私も、学生時代は短歌サークルに所属していて

毎週、歌会をやっていてマナーのうえで気がついたことがあります。

 

歌を詠まないで、参加する人は、ダメだということです。

実作しないで、批評ばかりしている人は煙たがられます。

マナー違反です。

 

同じように、読書会であるならば、課題図書を読んで参加する。

それが最低限のマナーです。

 

年配者でありがちなのは、20年以上前に読んだ

あるいは、学生時代に読んだ。

 

という、カビの生えたおぼろげな記憶で読書会に参加することです。

こういう参加者は、作品内容よりも、

学生時代の自分の思い出話だけする傾向にあるので、いやがられます。

 

必ず、課題図書を読むなり、再読するなりして参加しましょう。

 

2.課題図書の選び方

 

小説がお薦めです。

 

初心者向けの読書会としては、海外の中編小説が好ましいと思います。

 

だいたい80ページから150ページくらいの作品です。

 

フランス語でいうレシ(一人称で単線的な筋)と呼ばれる中編小説、

あるいは、三一致の法則(一つの筋、一つの時間、一つの場所)に則った

小説が、読みやすいです。また意見を述べやすいです。

 

この条件を満たし、

私が実際の読書会や、スカイプ読書会で扱ったものでは、

 

『異邦人』 カミュ

『脂肪の塊』 モーパッサン

『イワンデニーソヴィッチの一日』 ソルジェニーツィン

『変身』 カフカ

『クリスマス・カロル』 ディケンズ

『悲しみよこんにちは』 サガン

『坊っちゃん』 夏目漱石

 

などなどが、あります。

タイトルくらいは知っている、わりとポピュラーな作品です。

 

課題図書は、3日~7日程度で読めものがいいでしょう。

人によっては、学生時代に挑戦して読んだけど意味がわからなかった。

(特に、カミュ『変身』やカフカの『異邦人』 どういう意味だかわからない)

という感じで、一応は読んでいるかもしれません。

 

なので、課題図書の文庫本を

そもそも持っていることが多いと思います。

 

そういう作品なら、再読して、面白さを知りたい理解したいということで、

参加するモチベーションにもなります。

 

長編小説は、初心者向けの読書会ではやめましょう。

有名な作品でも、読了までに2ヶ月かかるような作品は敬遠されます。

 

参加をためらう人、読みきれず欠席する人が増えると思います。

 

長編小説は、ほぼ、三人称です。だから長いのです。

ドストエフスキーとか、登場人物が名前も長くて、あだ名もあって

すぐに、誰が誰だかわからなくなります。

2日読まないと、登場人物の名前を忘れて、挫折します。

なのでやめましょう。

 

また、主宰者が思い入れのある小説を選んでも、誰も読みません。

いきなり、課題図書に、東欧のマイナーな小説や、南米の幻想文学を選ぶと、

参加者のモチベーションは下がります。

 

私は、一人称の作品に、名作はあまりない

という立場なのですが、

(あることは、ありますけど、技巧が凝ってきて、読みづらくなります)

とりわけ、小説を読み慣れていない人は

三人称の小説を読むと登場人物が誰が誰だか、わからなくなるので、

最初の読書会は、特に一人称の中編小説をおすすめします。

 

上記だと、『脂肪の塊』以外は一人称小説です。

 

じゃあ、短編小説はという話になりますが、

登場人物の心理の移り変わりや、物語の展開がないので、

短編小説で、読書会をやるのも、実は、難しいです。

 

何作かまとめて読むのだったらいいかもしれません。

 

なぜ小説がいいのか?

 

これは、登場人物の心理を話し合えるからです。

 

読書会の醍醐味は、登場人物を、みんなで批評しあうことにあります。

 

坊っちゃんなら坊っちゃん。

ムルソーならムルソー。

グレゴール・ザムザならグレゴール・ザムザ。

セシルならセシル。

 

それぞれ、個性的な性格をしています。

それに関わる脇役たちも、いい味出しています。

 

映画や、マンガも、一番の醍醐味は

登場人物たちに感情移入できることです。

 

年令や性別によって、登場人物に感情移入できる

角度や深さが違うので、

読書会で、それぞれ参加者の意見が鮮明になります。

 

読書会が盛り上がるにつれ、参加者のそれぞれの人生観にひきくらべて

登場人物を理解しようとする真剣な欲求にかられます。

 

人間の感情をなんとか理解して言葉にしようとする運動が生まれます。

 

もちろん、ビジネス本や歴史もの、社会時評、自己啓発書で

読書会をすることも可能なのですが、

 

「人間の感情を理解する」

 

というのが、人間にとって一番難しいのです。

 

「人間の感情を理解する」という

生きていくうえで最もやっかいで、悩ましい営みについて、

深い洞察を与えてくれるのが

小説というジャンルです。

 

また、女性は、自分の身に置き換えて考え、実感(肌)で理解したがる習性があります。

男性は、どっちかというと抽象的なことやイメージで考えたがります。

 

ここに、埋めがたいギャップがあるのですが、

なんと、なんという奇跡でしょうか!!

 

小説を読んで登場人物について話しあっているうちに

この男女の脳みそのギャップが埋まる瞬間があります。

 

性別を超えて、お互いの盲点に気がつきます。そして、共感しあいます。

 

日本で歌会が盛んだったのはその辺に理由があると思います。

 

相聞歌とかありますよね。

お互いの恋心の「ずれ」を歌にして、贈り合ってるんですから優雅なものです。

 

小説というのは、感情を刺激するものでありながら

文字からなるという意味では、抽象的な創作物です。

 

絵からなるマンガや、映像からなる、映画、TVドラマは、

感情への刺激は強いですが、抽象的ではありません。

 

逆に、文字や数字からなる、ビジネス本や哲学書、自己啓発本は、

抽象的ですが、イメージによる刺激が少ないので感情的ではないのです。

 

感情を刺激しながらも、同時に抽象的な表現という

2つを兼ね備えているのが、小説の大きな特徴なのです。

 

感情で考える女性も、抽象で考える男性も、

小説のストーリーなら、多くの部分を共有できるのです。

 

そして、特別な文学の知識がなくても、普通に人間の感情が理解できれば、

小説に描かれていることなら、誰でも平等な立場で、読書会で話し合えます。

 

まあ、実際のところは、登場人物の心理を理解するという名目のもと

架空の登場人物をネタにして、人物批評や、価値判断をやっているだけです。

 

週刊誌の芸能人のゴシップを読んで、不倫や浮気について、

勝手に意見しているのと大差ありません。

 

本質的に下世話です。

 

でも、これは下世話ですが、やはり楽しいのです。

 

初心者向けの読書会は、ハードルを低くした方がいいので、

下世話な関心を刺激する意味でも、小説を課題図書にした方がいいでしょう。

 

美醜やお金や性に関わった話も、小説に対する意見なら

高尚ぶってバンバン言えます。

 

そこで、できれば、海外の中編小説が望ましいです。

 

有名な海外古典作品は、人間のしょーもない下世話さが、

優雅に覆い隠されています。

 

平安時代の相聞歌で、上品に恋心を歌いあっているのと一緒です。

 

(ホントは、どうしようもなく下劣で、煩悩まみれですが)

 

だから、古典になるのです。

 

現代の日本の作家は、話題性もあって読みやすいし取り上げやすいのですが、

なまじわかってしまうので、下世話になりがちです。描かれている欲求もあまりにオープンです。

そこへの好みも分かれるので、参加者がかたよる可能性もあります。

 

また、ミステリーやサスペンス、SF、ラノベも、

ジャンルへの好みがわかれるので、参加者を選びます。

 

ビギナーの読書会ではお薦めできません。

 

なので、私は、海外の古典作品をおすすめします。

 

異国が舞台なら、日本人の習慣から解放されて自由に意見できます。

 

やや無責任かもしれませんが、文学研究として精読するのが目的ではないので

初心者向けなら、生活習慣の違う海外の作品ほうが刺激があるし

また、海外の有名作品を、とりあえず読んだ、理解した、

という知的な虚栄心は最低限満たせるでしょう。

 

それが、今後の参加のモチベーションになるかもしれません。

 

しかし、参加者集まりにくいかもしれないので、初めての場合は

国民的作家である夏目漱石の作品が無難かもしれません。

 

課題図書としては、新潮文庫か岩波文庫で手に入る作品にしましょう。

翻訳者は同じ人のものが望ましいです。

翻訳次第で全く別の作品になってしまいます。(とくにドイツ文学)

 

まあ、でも難しいでしょうね。

同じ文庫本を持ち寄って集まるって、たぶん意外と難しいです。

文庫本といえども高いですよね。

 

オススメできませんが、初参加なら、青空文庫で読んできてもいいと思います。

 

清水國明さんよりブックオフを愛していると自負する私は、

文庫本などは、ブックオフで買うことを薦めますが、

衛生的に抵抗ある人が多いようで、結構、スルーされます。

 

 

3.参加者の人数

 

物事を話し合う人数は、奇数がいいといいます。

意見が割れても、多数決がきくからだそうです。

 

読書会は、5人がいいんじゃないでしょうか。

5人だと、会話の島が分かれないと思います。

 

7人だと、2つにわかれますね。司会の手腕が問われます。

 

3人でもいいですけど、ひとりひとりの負担が大きくなるので

中級者向けかもしれません。

 

4.読書会の進め方

 

まずルールの確認です。

 

私は、最初に参加者に2つのルールを提案します。

 

まず、お互いのプライバシーにかかわる質問は意見を読書会ではしない。

 

これはなぜかは、後で説明します。

 

もう一つは、人の意見を否定しない。

 

誰かと誰かが、議論をし始めると、周りがしらけてしまいます。

いろいろな意見があっていいと思うので、ひとまずは尊重します。

納得いかなくても、「そういう意見もあるか・・・」で通り過ぎればいいと思います。

 

小説内の事実確認は、みんなで判断しますが、

お互いの考え方を批評してたり、否定したりすると、

これはやがてプライバシーに踏み込む喧嘩になるので、

どんな意見であれ、「それは違うぜ!!」と言わないルールにします。

 

この2つのルールを守るように、予め参加者に確認して下さい。

 

トラブルになる場合は、司会が

ルールを守らない参加者に関しては、警告してください。毅然と。

 

 

私は、自己紹介は、簡潔に済ませます。

名前と、それぞれに好きな作品をあげてもらうくらいですね。

 

さっさと、読書会に入ってしまいます。

 

 

ただ、司会=主催者ならば、自己紹介は、しっかりして下さい。

ある程度の自己開示は必要かもしれません。

私の場合は、運営者情報に自己開示しているので、必要ないですが、

読書会への思いなど、手短に述べたほうがいいと思います。

 

 

 

司会進行(ファシリテーター)を予め決めておきましょう。

 

初心者の読書会は、主催者=司会だと思います。

 

アメリカの読書会は、プロのファシリテーターがいるらしいです。

プロの読書会司会者を呼ぶだけで

3万円から5万円の料金が発生するそうです。

参照記事

 

豊富な読書量や、知識教養が問われるので、プロがいてもおかしくないですね。

 

私が思うに、

司会進行(ファシリテーター)が、まずやるべきことは、

 

小説のあらすじの確認です。

 

これ以外と、盲点なのですが、

課題図書読んできたのに、あらすじを誤解している人がいます。

 

小説の読めない人は、

 

1.登場人物の名前が覚えられない

2.話の筋がわからない

 

このどちらかです。

 

夏目漱石の『こころ』を読んで、

学生=先生で、学生が大きくなって

自殺したんだと誤解してくる人もいます。

 

なので、司会が、登場人物の確認と

あらすじの確認をしてください。

 

 

場合によっては、半分しか読めずに、読書会に

どうしても参加したくて、来てしまったという

とぼけた参加者もいます。

 

そのまま放置していると、後々迷惑なので、

そんな、彼/彼女のためにも、あらすじを説明してあげましょう。

 

 

ホワイトボードを使って、人物関係を確認してもいいと思います。

 

これがしっかりできれば、司会(ファシリテーター)の役割はほぼ終わりです。

 

念入りにやればあらすじ確認は、20分かかります。ざっとやれば5分で終わると思います。

 

作品の難易度によって、変えてください。

 

 

あらすじの解説をして、間違っている所があれば参加者に指摘してもらいましょう。

司会といえども人間なので、読み間違いはあります。

 

司会は、あらすじを200字でまとめるくらいはできる能力が必要でしょう。

 

新潮文庫の裏表紙のあらすじのまとめっぷりは、秀逸なので、参考にしてください。

 

(私は、あの裏表紙のあらすじ書いている新潮文庫の担当を

「あらすじジジイ」と勝手に命名しています。

あらすじ書いてひとすじで40年で、平社員のまま定年退職を迎え、

いまだに嘱託で、後進のあらすじに朱筆を入れて、嫌がられている職人肌のじいさんだと

勝手に想像して、尊敬しています 笑)

 

話が、それました。

 

その後は、登場人物について、順番に話せばいいと思います。

 

主人公の性格や、プロフィールを上げてもらって、

ホワイトボードに書いていくのがいいと思います。

 

それが終わったら、脇役も、同じように、どんな性格か

箇条書きで書いていくという方法があります。

 

読書会が温まらないうちは、それなりに時間稼げます。

 

 

また、司会進行が予めレジュメを用意して、

「なぜ~は~と思ったのか」

「なぜ~は死んだのか、好きになったのか」

こんな感じで、質問を作って話し合ってもいいと思います。

 

例えば、カミュの『異邦人』なら

 

ムルソーの態度、考え方、暮らしぶり、母親への思い

あるいは、マリイ、レイモン、セレストついて

それぞれ、アラブ人を殺す第一部とその裁判の二部で

変化があるので、話しあえばいいでしょう。

 

また、カフカの『変身』であれば

グレゴール一家の暮らしぶりについて

まず確認して、

虫になる前と、後の家族の態度の変化を話し合う。

 

 

こんな感じですかね。

 

作品によって、話しあうテーマは変わりますが、

中編小説は必ずなんらか、1つは事件があるので、

事件と前と後での、登場人物の心の変化を

話し合いたいものです。

 

『異邦人』ならムルソーがアラブ人を殺す前と後。

『変身』ならグレゴールが、虫になる前と後

『悲しみよ こんにちは』なら、アンヌがくる前と後

『イワンデニーソヴィッチの一日』なら、ショーホフが収容所に入る前と後。

 

こんな感じで、事件を通して、登場人物たちの心に変化があります。

 

名作は、一点のゆるぎもなく、精密に事件前後の心の変化が描かれています。

 

「なるほど」、「なるほど」と、ひざ叩きまくりです。

 

その変化について、しっかり話しあいましょう。

 

初心者の読書会ならレジュメはいらないと思います。

 

そのかわりに、司会だけがメモを用意すればいいと思います。

会話が煮詰まったら、メモに従って議題を変えていけばいいでしょう。

 

あとは、参加者が流れに任せて、ぼちぼち発言するようになります。

 

最初の1時間あたりは、盛り上がらないかもしれませんが、

1時間で経ったら、休憩10分入れれば、

あんがい、後半、みんなリラックスしてしゃべりだします。

 

はじめての参加者ばかりのときは、最初の一時間が、たいへんです。

 

主催者が司会をやると思うので、ひとりでしゃべって

とりあえず、読書会を力ずくでリードしてください。

 

予めネタを仕込んで、すべらない話でもして、場を温めて下さい。

 

それが無理なら、最終手段として、作品をひたすら朗読する。

 

できれば大声で。

 

ひたすら朗読すれば、参加者も情にほだされて、

「なんかしゃべんなきゃいけないかな、司会の人が気の毒だなぁ」と思うでしょう。

 

で、最初の休憩時間で、参加者同士でちょっと雑談して、打ち解けると思います。

 

すると、後半は流れがガラッと変わって、積極的に話す人が出るので

最初はもりあがらなくても、司会の人は、後半のそんな展開を待って、がんばってください。

 

そして、後半1時間話し合って、正味2時間でお開きです。

 

次回の開催予定など連絡して、

「またきてくれるかな」「いいとも!!」の

コールアンドレスポンスで終わりにしてください。

 

 

で、最初のルールに戻ります。

 

まず、お互いのプライバシーにかかわる質問は意見を読書会ではしない。

これを宣言します。

 

実は私は、参加者のプライバシーを詮索しないようにしています。

 

お互いのプライバシーを知ってしまうと、読書会に緊張感がなくなる気がするんですね。

単なる仲良しサークルになってしまいます。

本当に、読書会を長く主催したいなら、参加者は、読書会だけの関係にすべきだと思います。

 

読書会は、性別も年齢もバラバラな人が参加できる場所です。

 

逆に言えば、非常に配慮が必要な場でもあります。

 

初心者にとっては、そこへの配慮が、2度めの参加につながる重要なポイントです。

 

主催者に根掘り葉掘り訊かれて、なれなれしくされると、イラッとくると思います。

 

読書会だけのつきあいなら、ずっと付き合えるのに、

なまじ、懇親会や飲み会をやって、個人的に親しくなると

お互いの嫌な面も見えますし、人生に干渉してしまう

あるいは、されてしまうこともあります。

 

確かに、読書会では、小説を読むことを通して、

普段ならば、人には言わないような

(時には家族にも言わないような)本音を話すこともあります。

 

その部分で、読書会は、楽しくもあるのですが、

同時に危険でもあります。

 

読書は、強力なラポール(心理的な親密さの架け橋)になります。

 

しかし、これは諸刃の剣でもあります。

 

読書が好きであれば好きであるほど

人は、本質的に人に理解されたくない孤独で繊細な部分を

同時に、育てているものです。

 

その複雑な心理を、尊重したうえで、付き合わないと、

人の心に土足で踏み込むような言動を平気でしてしまいます。

 

なまじ感性の鋭い人は、人を傷つけるとき、深くえぐります。

 

また、勝手にえぐられたと誤解して、傷つく人もいるかもしれません。

 

そういう危険性を考慮して、

読書会を運営していかないと、とりかえしのつかないことになります。

 

 

読書会が充実して、盛り上がれば、もしかしたら

参加者がお互いわかり合えたと錯覚してしまうかもしれません。

(とくに主宰者や司会者)

 

しかし、これは、大きな誤解です。

 

いい年した大人が、そんな簡単に分かり合えないです。

 

いい年した大人は、早々に分かり合えない

 

このことを肝に銘じてください。

節度をもって、読書会を続けていくのが健全だと思います。

 

だから、参加者が、何歳で、なんの職業で、どこの学校を出て、既婚か未婚か、

そんなのは、どうでもいいことです。

 

主催者は、運営上、信頼をえやすいので、自己開示という意味で

続けていくうえで、なんらかプライバシーを晒すのは仕方ない部分ですが

参加者には、それぞれの事情があるので、なるべく、本人が話さない限りは

プライバシーには触れないほうがいいと思います。

 

自己開示を、参加者に強要するのもやめたほうがいいでしょう。

 

 

そういうの求める人は、そういうのが好きな人の集まる

自己啓発セミナーやら自己啓発読書会にでも行けばいいと思います。

 

 

ただ、何回も読書会を重ねて、信頼関係ができれば、

懇親会やらお花見やら企画してもいいと思いますが、

最初のうちは、読書会をやってすぐ散会がいいと思います。

 

あるいは、残って課題図書に理解を深めたい人だけで、会場でさらに話しあう。

 

そのくらいじゃないでしょうか。

 

 

君子の交わりは淡きこと水のごとしです。

 

実は、私は趣味のテニスサークルを運営していて、

お互いのプライバシーに干渉しないのが

サークル運営の肝であることに気がつきました。

 

なまじ、テニスの後、喫茶店に行って、冗談交じりに

お互いのプレースタイルを巡って、話し合っているうちに

大げんかになったことがあります。

 

テニス仲間の女性を、大泣きさせてしまいました。

 

こんなことがあると、他のサークルメンバーに迷惑だし、

お互いにいい気持ちしません。しこりも残ります。

 

大学生のサークルと違った、大人のサークルならではの

ドライで繊細な配慮が必要です。

 

5.会場について

 

会場は、有料の会議室がいいと思います。

ファミレスやカフェは、うるさいので初心者の読書会には不向きです。

 

居酒屋で読書会は、初心者には不適切です。

個室ならアリかというと、そうでもありません。

 

なぜなら、読書会は、意外と人間の繊細な問題に踏み込みます。

そして、酔っ払うと、人間は不規則発言が多くなります。

 

小説の読解は、やがて宗教や政治、人種、差別の問題にたどりつきます。

 

そういうデリケートな話題を冷静に読書会をすすめるには、

それなりの冷静さと体力が必要になります。

 

欧米人は、その部分のもともとの精神力と基礎体力が、日本人と違うんですね。

だから、ワインを飲みながら、政治や人種や宗教のタブーをこえて、読書会ができるのです。

 

お互いのアイデンティティーを尊重する文化だからです。

 

個人主義が、徹底しています。それがタフさにつながっています。

 

そのタフさは『オースティンの読書会』という映画を見れば、なんとなくわかります。

 

別に、日本人をディスっているわけではないですが、初心者でそこまで配慮できません。

 

居酒屋でやると、酒に酔ったうえでの話の行き違いで

余計なこと言ってしまいます。

つまんない冗談とか。そういうのが原因で無用なトラブルが生まれます。

 

トラブルにならなくても、「なんとなくいやだな」と思って

二度と来なくなる人が多いと思います。

 

だから、場所は重要です。

 

でも、日本人には、日本の歌会や句会の伝統があります。

 

言葉を通して、「もののあわれを知る」という高度な文化的営みをしています。

 

その文化的な基板を大切にして、初心者の読書会をすすめていくことが大切かなと思います。

 

私は学生時代、歌会をカフェや居酒屋でやったことありません。

 

ただ、吟行会で、しかたなく一度だけ居酒屋で歌会やったことありますが、

注文もせず、空きっ腹で歌会したもんだから、

飲み始めたら、すぐ悪酔いして、後輩が、帰りの電車で吐いたり、

それを私が、介抱していたら、他の乗客にスリに間違われて腕をつかまれたりと

それはそれは、カオスでした。

 

 

最悪だった記憶しかありません。他の客にも迷惑です。

 

そうなると、会議室を借りた方がいいとなります。

地方は、営利目的でなければ、安く使える公共の会議室がいっぱいあります。

そういう場所を探しましょう。公民館でもできます。

 

家に帰るまでが、遠足であるように

課題図書を自宅の本棚に戻すまでが、読書会です。

 

懇親を深める前に、読書会の質を深めましょう。

 

最後に私が地元長野市で行っている読書会のもようを

録音したアーカイブがあるので、興味があれば聴いてみてください。

 

 

 

中級者向けの読書会に関しては、また別に記事書きます。

 

質問・感想などあればお気軽にメール下さい。

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