読書人階級のルネサンス

元外務省職員で、いまは作家の佐藤優さんは、

評論家の副島隆彦さんとの対談で

『正直言いますと、私は、自分の本を読者数は、5000人くらいだと思っています。

この5000人の読者のことを意識しながらいつも文章を綴っています。』

暴走する国家 恐慌化する世界―迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠       より

以上のように、おっしゃっていました。

 

佐藤優さんの本は、10万部以上売れているケースもあるのですが、

その彼ですら、5000人の読者数と思っているのは、どういうことか?

 

 

その5000人というのは、おそらく日本の読書人階級の絶対数だと思います。

アメリカだと、10000人と言われています。単純に日本の人口の2倍です。

 

なにをもって、読書人階級というのかは、明確にわかりませんが、

おそらく、私は、日本における読書人階級というのは、

 

『岩波文庫』を買って読む人

 

かなあと思っています。

 

岩波文庫というのは、本屋さんは買い切りです。

 

返品できません。

 

なので、田舎の本屋では、売れ残った岩波文庫が日に焼けて店ざらしになっています。

 

あれ、返品できないから、ああなっているんです。

 

岩波文庫が面白いと思って読む人は、おそらく読書人階級です。

 

そういう人を想定して、本屋さんも岩波文庫を仕入れます。

 

昔は、それでも買う人がいたのでしょう。

 

しかし、最近は、岩波文庫を扱っていない本屋さんも多いです。

 

90年代までは、岩波文庫がない本屋は、二流だという風潮でしたが、

今では、そういうシビアな感じもなくなってきました。

 

実は、岩波文庫も、出てきた頃は、バカにされていたのです。

 

昭和10年代に、ノーベル賞作家の川端康成が、

「純文学の敵は岩波文庫だ」と喝破しました。

 

これは、岩波文庫が、文学を大衆化させるから、

純文学が成り立たないという意味です。

 

昭和初期まで、本のない時代は、ほとんどの本は、英訳でした。

ドイツ哲学も、フランス思想も、ロシア文学も、英訳本で読んだそうです。

 

芥川龍之介が

丸善の二階の薄暗がりで、「人生はボードレールの一行にも若(し)かない」とつぶやいたり

梶井基次郎が、洋書の棚に、レモンを置いて、爆発することを夢想したりするのは、

英語の読める一部の人間だけが、

世界の本物の知性に触れることができるという、非情な事実を

文学的に表現したまでの話です。

 

ということは、英語が読めないと、読書人階級ではなかったのですが、

それらを、あらかた邦訳して

だれでも読めるようにしてくれたのが、実は、岩波文庫なのです。

 

皮肉なことに、知を(外国語の読める)特権階級から

大衆化させたというのが、岩波文庫の役割だったのに

今では、岩波文庫を買って読む人が、読書人階級になっています。

 

この事実をもって、

「戦後は日本の教養水準が著しく落ちた」

と嘆いていた昔の人もいます。

 

ただ、今は、教養という言葉そのものが廃れてしまったので、

そんな、爺さんの小言みたないこともいわれなくなりました。

 

見栄でも、百科事典や、文学全集を買うなんて奇特な人はいません。

 

本来の意味からすれば、書斎があって

世界思想体系とか日本古典大系とかを本棚に並べているような

戦後日本の上場企業部長クラスの中産階級が、

読書人階級だったのでしょう。

 

あるいは、広い意味で言えば、狐狸庵先生やどくとるマンボウなどの

第三の新人のエッセイくらいしか、ホントはわからないけど、

積ん読程度で、難しい本も一応、買っているようなサラリーマンです。

 

しかし、そういうサラリーマン読書人階級も、

累々と野に屍(しかばね)を晒(さら)しています。

 

現在では、哲学や思想、文学に特別の価値を見出して

岩波文庫を手にとるような一般人が読書人階級ですかね。

 

年齢は、どうなんでしょうかね。

 

高齢だからとか関係ないような気がします。

 

どの年代にもまばらにいて、

 

それが、現在の読書人階級なのだと思います。

 

まあ、けっして、社会的に恵まれている人ではもないような気がします。

真剣に本を読めば読むほど、社会に絶望しますからね。

 

本が好きで、ある程度、批判的に読む力のある人だと思います。

 

そして、新書とかはバカにして、読まない人でしょうね。

あるいは、新書なら1時間で読める人でしょうね。

 

あと、本屋の棚については、その書店の店員より詳しい。

そんな人かもしれません。

 

岩波文庫のマルクスの『資本論』や

カントの『純粋理性批判』とか読める人でしょうね。

 

そのレベルの人が、日本で5000人。

アメリカでは10000人、ですかね。

 

その3割は、東京と、ニューヨークにいるのでしょうね。

 

図書館で本借りる人と、現代思想しか読まない人。

これも含めれば、もう少し人数増えますね。入れていいのか微妙ですけど。

 

お前はどうだっ、ていわれれば、「おれは読書人階級だ!!」と

胸を張って答えたいですが、ちょっと自信ないですね・・・。

 

なぜなら、アマゾンのマーケットプレイスとBOOKOFFが好きですからね。

BOOKOFFで本買うやつは、読書人階級ではないという自覚はあります・・・。

 

まあ、でも、経済発展著しい他のアジア国々には、

まだ、そういう読書人階級が、存在しないのですよ。

 

アジアの読書人階級は、英語の読める欧米の帰国子女です。

 

だから、西欧近代の思想哲学を、

日本語の翻訳を通して学ぶということを

一般のアジアの皆さんはやっています。

 

そう考えれば、

いずれ、生活に追われなくなった

多くのアジアの人たちが日本の漫画にあきて

出版点数の多い日本の本も読むようになります。

 

そうなれば、文学思想哲学も読むでしょうね。

 

そして、

読書会やるようになるでしょうね。

 

日本人読書人階級が頑張って優位を保てれば、

読書会も、日本発の形式でやるようになるじゃないですかね。

 

ならないか。

 

まあ、でも、

出版文化は、日本は江戸時代からの伝統があるはずなんですが、

いよいよ、不況を含めたもろもろの事情で崩壊してきています。

 

愚民化政策もあるような気がします。

 

出版文化は日本が世界に誇る、数少ない財産なんですけどね・・・。もったいないですね。

 

当サイト、スカイプ読書会と、私の主催する信州読書会は

現存する読書人階級のセーフティーネットを目指しています。(いいきった)

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