山田詠美 『ぼくは勉強ができない』読書会のもよう

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2016.9.30にツイキャスで山田詠美さんの『ぼくは勉強ができない』の

読書会を行いました。

皆さんに感想をいただきました。ありがとうございます。

感想文はこちら

私の書いた感想です。

 

『同情も鈍感も』

「ありがと、助かっちゃう。うちに来る鳥さんたち、すごく食べるんだよ」

赤間ひろ子が、給食のパンの残りを集めている。

クラスメートのみんなは、赤間ひろ子が鳥の餌としてパンを集めているという口実がウソであることを知っていた。彼女の家は、口に出せないほど貧しい。片親であるのは秀美と同じだ。

ひろ子は、毎日たくさんのパンの残りを紙袋に入れて持ち帰るのだ。

一方、転校してきたばかりでクラスに馴染めなかった主人公の時田秀美は、赤間ひろ子の集めるパンに隠された秘密を知らなかった。

ふとしたきっかけで、彼女の貧困を知った秀美は、親切心からわざとパンを残して、ひろ子に差し出す。

彼女は、秀美にパンを投げつけて、泣き出した。

秀美は、自分の背後から、音のない溜息が押し寄せてくるように感じて、思わず後ろを振り返った。そこには、いくつもの彼をとがめる目があった。彼は、パンを手にしたまま、非難の視線を受け止めた。子供たちは、無言で秀美をののしり、そうすることで、ようやく、この教室の仲間として受け入れたのであった。

味わったことのない感情を抱えて帰宅した秀美は、事の顛末を祖父に話した。

すると祖父は、こう諭した

「おまえは、赤間さんって子のプライドを粉々にしちゃったんだなあ。誰もが、その子に同情してた。でも、おまえは、それに気付かなかった。それで、その子の気持ちが、どれだけ救われてたことか。そして、他の子たちが、おまえに、それを教えないことで、どれだけ赤間さんを助けていたことか。(中略)悪意を持つのは、その悪意を自覚したからだ。それは、自覚して、失くすこともできる。けどね、そんなつもりでなくやってしまうのは、鈍感だということだよ。賢くなかったな、今回は。おじいちゃんの言ってることが解るか」

同情も鈍感も、等しく他人を傷つけるという複雑な現実を子どもが理解するのは難しい。

だから、賢くなるのをあきらめて、大人という抽象的な生き物に成長していく。

(おわり)

読書会のもようです。

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