『カラマーゾフの兄弟』より 『肉弾スメルジャコフ』

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『肉弾スメルジャコフ』

「僕(※引用者注 イワン)を尊敬しようって気を起こしたんですよ。あれ(※引用者注 スメルジャコフ)はただの召使いの、下種野郎です。もっとも時期がくれば、最前線の肉弾になるでしょうがね。」

カラマーゾフの兄弟 上巻 P324 新潮文庫

 

乞食の白痴女のリザヴェータがフョードルの家の風呂場で産み落としたのがスメルジャコフだった。彼は、フョードルの召使いであるグリゴーリィ夫妻に育てられた。料理の腕前を買われ、コックとして教育を受け、徐々に、フョードルの信頼を得ていった。しかし同時に、彼は猫を殺して葬式ごっこしたり、犬に針を仕込んだパンを食べさせたりするなど良心のない傲慢な性格の持ち主でもあった。フョードルの次男であり新進作家として名を馳せるイワンに私淑しており、とりわけ『不死がなければ善もない』『すべては許される』という彼の無神論に影響を受けた。イワンは、スメルジャコフにフランス仕込みの最先端の無神論を吹き込み、洗脳した。フョードルに信頼され、家のすべての秘密を知り得たスメルジャコフは、フョードルがグルーシェニカと再婚すれば、カラマーゾフの兄弟たちの相続するべき遺産がなくなってしまうことに気がついた。暴力的で横柄な長男ミーチャも、三男アリョーシャも嫌っていたスメルジャコフは、イワンに多くの遺産が相続されるように、フョードル殺害計画を考えだす。(イワンもそれを強く望んでいるはずだ)そうひとり合点したスメルジャコフは、イワンと阿吽の呼吸で連携したつもりになり、フョードルを殺害する。共同謀議(Conspirasy)だった。イワンが共犯だという証拠は、彼が常々「すべては許される」と主張していたことだけだった。あとは、スメルジャコフが、崇拝するイワンのために勝手に斟酌して実行したのだった。スメルジャコフは、イワンの『最前線の肉弾』となった。自己欺瞞の強いイワンは真相を知ると、狼狽した。そして、親殺しの責任をスメルジャコフに押し付けようとした。イワンの裏切りに失望した彼は、『誰にも罪を着せぬため、自己の意志によって進んで生命を断つ』と、あくまでも肉弾らしい遺書を残し自殺した。

(おわり)

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