『カラマーゾフの兄弟』より『自己欺瞞の怪物 フョードル』

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『自己欺瞞の怪物 フョードル』

フョードルは、自己欺瞞の怪物である。

でたらめな言動で周囲を自分のペースに巻き込むのが得意だ。

彼は2度の結婚をして一財産築いた。

 

情欲の怪物でもあり、自宅に水商売の女性を招いて乱痴気騒ぎをする。

長男ドミートリーとグルーシェニカという魔性の女をめぐって

殺人にまでつながる確執を演じる。

グルーシェニカにぞっこん入れ込んでいるフョードルは

道化を演じながら、老いらくの恋を世間体から邪魔するものには

片っ端から仕返しをしはじめる。

 

彼の自己欺瞞の核心を見抜いている人間がいた。

それは、長老ゾシマだった。

長老は、自己欺瞞の怪物であるフョードルを諭す。

 

『肝心なのはおのれに嘘をつかぬことです。おのれに嘘をつき、
おのれの嘘に耳を傾けるものは、ついに自分の内にも、周囲にも、
いかなる真実も見分けがつかなくなって、
ひいては自分をも他人をも軽蔑するようになるのです。』

『カラマーゾフの兄弟 上』 原卓也訳 新潮文庫(p102)』

 

長老に人格上の欠点をたちまち見ぬかれたフョードルは、彼の手におもわず接吻する。

しかし、説教に感謝したふりをしながら、内心は相当に頭にきていたのだ。

 

彼の思いはきっとこうだ。

ゾシマも、自分に嘘をついていて、俺と同じ道化を演じているはずだ。

それなのに、なぜ、女、子どもは、ひっきりなしに彼の元を訪れ、崇めるのだろうか?

ゾシマは結局、神の権威をカサにきているだけじゃないか。

俺と同じような自己欺瞞をしているとしたら、

ゾシマも自己欺瞞の怪物だ。

もし神がいなければ、ゾシマだって俺と変わらない道化のはずだ。

物分かりのいいこというが、なんか気に喰わなねえな。

 

以上のように、フョードルは、腹を立てていたのだと、私は思う。

しかし、神の存在が否定できない以上は、

老獪なフョードルも、ゾシマの自己欺瞞を暴くことはできない。

 

そもそも、フョードルにも捨てようにも捨てきれない信仰のかけらがあるのだ。

彼は、信仰がなければ、単なる卑劣漢に堕してしまう。それは、彼には、耐え難い。

道化でいる限りは、信仰を捨てずにいられる。だから、彼は道化を演じ続けるのだ。

(終わり)

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