村田沙耶香さんの『コンビニ人間』読書会のもよう

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2016.9.2にツイキャスで村田沙耶香さんの芥川賞受賞作

『コンビニ人間』の読書会を行いました。

皆さんに読書感想文を書いていただいたので私も書きました。

 

『コンビニ人間の使命』

 

36歳フリーターの古倉さんのアパートのバスタブに住みついた無職の白羽さんは語る。

「皆が足並みを揃えていないと駄目なんだ。なんで三十代半ばなのにバイトなのか。なんで一回も恋愛したことがないのか。性行為の経験の有無まで平然と聞いてくる。(中略) 誰にも迷惑をかけていないのに、ただ少数派というだけで皆が、僕の人生を強姦する」

 

気軽なレトリックで「強姦」という言葉を使い、『バイトのままババアになってもう嫁の貰い手もないでしょう。あんたみたいなの、処女でも中古ですよ』と罵る白羽さんに、古倉さんは、『被害者意識が強いのに、自分は加害者かもしれないとは考えない思考回路』を発見した。そして、結局のところ『自分を可哀想がるのが白羽さんの趣味ではないのか』と容赦ない批評を加える。

 

人間は往々にして、差別される側だと自覚するのを怖れるあまりに、必死に差別発言を繰り返す。「やられる前に、やれ!」という個人レベルの安全保障の論理だ。「先制攻撃は専守防衛に含まれるのか?」というダブルバインドは、人間不信の募る集団に特有のバグである。それは、リテラシーの低い人間から思考能力を奪い去り、「これが正常だ」と、ウソや言い訳を押し付けてくる悪質なバグでもある。

 

他人に吐き捨てた刃物のような言葉がブーメランとなって返ってきたときには、社会の不公平にむかって被害者ぶる。あるいは、「縄文時代」の歴史認識をもちだして、幼稚な優生学をこねくり回す。そして、しゃべり疲れれば、バスタブのなかで仮死状態を装う。

 

そんな自分に同情する卑劣な毒虫である白羽さん=「それ」をバスタブで飼い、餌を与える古倉さんは、この饒舌な「それ」を観察するにつれて、結局は、「それ」が、「自分自身であることから逃げつづけ、治せないものを治そうとして、正常を装ってきた自分のウソ」そのものでもあることに気づいた。

 

ようやく、彼女は思考回路の「毒虫=バグ」から解放されたのだ。

 

「コンビニ人間」としての使命にめざめての ボーンアゲイン! 強く生きる。

 

(おわり)

読書会のもようを録音した音声です。

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