森鷗外『阿部一族』読書会のもよう(2019 4 19)

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2019.4.19に行った森鷗外『阿部一族』読書会のもようです。

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私も書きました。

 『日本国憲法の精神に殉死する!?』

政局という政治用語がある。政局は、権力行使や人事によって、刻々と変化する政治の潮目である。政局を、じっと定点観測しているプロが居る。この作品では、大目付役(謀反を取り締まる役)の林外記だ。最も政局に通じており、藩内の隅々の政治権力に目を光らせている。林外記は、阿部弥一右衛門の追腹を巡る騒動と家督相続において、本家の所領を細かく割いて分割するという嫌がらせをして、阿部一族を徐々に追い詰めていった。同時に、目障りな竹内数馬も始末しようとシナリオを書いた。

政局には、シナリオがある。プロレスにおいて、観客席の反応を見ながら、興行の目玉が作られていくように、政局を加味して、国家権力の分配と人事が行われていく。鎌倉幕府以降の武家の世俗権力は、代替わりを繰り返しながら、殿様を神輿にして、それを支える家臣団の合議制を維持していくやりくりを洗練させた。政局を動かすのは家臣団だ。

よって、お殿様は、代替わりするにつれて、君臨しているだけになる。合議制の家臣団が実際の政務を執る。そして、大目付役が情報機関として、殿様と合議制の権力関係を監視する。謀反が起こらぬように統治機構(フレーム・オブ・ガバメント)を維持していく。

忠誠を尽くし、謀反の気を示さない。これが、太平の世の武士の賢い生き方だ。この作品の中で、一番懸命な生き方をしたのは、柄本又七郎だ。全てに配慮して身を処している。

 

「藪山もつかわそうか」と、光尚が言わせた。又七郎はそれを辞退した。竹は平日もご用に立つ。戦争でもあると、竹束がたくさんいる。それを私に拝領しては気が済まぬというのである。そこで藪山は永代御預けということになった。

 

主君への忠誠の証を立てるため隣家に押し込むのも厭わない。功を上げて、藪山まで拝領すれば、その後は、やっぱり、「御恩報じ」が待っている。うまい言い訳で、辞退しないと、危険だ。林外記のような目付にマークされると、最悪のケース、一族ごと抹殺されてしまう。

「殉死」という形式が成立したのは、統治機構の維持のためだ。恐るべき知恵である。

戦後日本の統治機構は、日本国憲法によって定められている。戦後日本において殉死するなら、まずもって日本国憲法の精神に殉死することになる。我々にそれができるか!?

 

(おわり)

読書会のもようです。

 

  • 2019 05.09
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