『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』 渡瀬裕哉著 すばる舎  読書会のもよう(2020.4.8)

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2020.4.8に行った

『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか

 ~アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』  渡瀬裕哉著 すばる舎 

予習読書会のもようです。

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私も書きました。

「戦後日本人のアイデンティティとしての日本国憲法」

2000年代から進んでいる日本の右傾化。私は最近ずっと、なぜ日本で右傾化が進んだのか、考え続けてきた。

「SNSの普及のせいで、エコーチェンバーと呼ばれる『同じ意見の人だけが話し合っているうちにそれが正しいことだとみんなが信じてしまう現象』が起こり、右傾化が進んだ」と以前にNHKのクロ現でもとりあげられていた。

私の記憶では、それ以前の、インターネットがそれほど普及していない時期から、右傾化ははじまっていた。私が大学生だった90年代の終り頃、『朝生』みたいなテレビ討論会や小林よしのりの漫画などから政治に関心を持つ人が、一定数いた。私もその頃に、政治に興味を持った。小泉政権が党内の反対勢力に刺客候補を立てた‎2005年の郵政選挙の熱狂は、今も頭に焼き付いている。

1978年生まれの私は昭和の終わりから、平成の初めにかけて義務教育を受けた世代だ。信州はリベラルな土地柄のせいか、学校の先生は、戦後民主主義の理念を奉じている方ばかりだった。今振り返っても、その教育は、良かったと信じている。

上京して大学に入って、就職して、各地の人と付き合うようになって、政治傾向に多様性があるのがわかってきた。日本では、まずアイデンティティは、出身地がベースになっている。

4年前のトランプ大統領の誕生によってアメリカが保守的、内向きになるにつれて、自分の受けてきた戦後民主主義教育の理念が、その憲法を押し付けた側のアメリカからも否定されていくという、想像しがたい事態が起こってきた。

そして、日本のいわゆるリベラル(主に自民党を批判する勢力)も、リーマンショック以降に、右翼勢力のカウンター運動に特化しつつ、2015年の国会前のデモを最後に、勢いを失っていくのも目の当たりにした。

(引用はじめ)

アイデンティティの分断とは、技術革新がもたらしていた単なる結果に過ぎない。そして、アイデンティティの分断が政治的動員に利用されることで、本来は多様であるはずの人々のアイデンティティは画一的で単純なものに押し込められてゆく。(P.7)

(引用おわり)

2015年の国会前のデモに集まったSEALDsの学生たちを私は冷ややかに眺めていた。渡瀬先生の指摘を当てはめれば、彼らはアイデンティティを分断されて、政治的動員に利用されたとしか思えない。鳴り物鳴らして、「戦争反対、安倍はやめろ」と叫ぶ彼らの画一的で単純な政治的態度も、これはこれで、洗脳のはじまりではないかと危機感を抱いた。

スマホの普及で、虚実のはっきりしない、さまざまな独自動画コンテンツが視聴可能になった。自分の嗜好にあった、情報を無批判に浴び続けることができる。それによって、アイデンティティが形成されていく部分がある。メディアリテラシー(読解力)がなければ、メディアの編集技術だけで、操り人形みたいな人格が形成されてしまう。保守だろうがリベラルだろうが、情報を鵜呑みにして、自分自身の判断を放棄してしまえば、それは洗脳されたのと同じだと思う。

恥ずかしながら、私は、読書会を始めるまで日本国憲法を自発的に読んだことはなかった。戦後民主主義の理念は、すべて日本国憲法に由来している。しかし、不思議なことに、日本国憲法は、日本人に日々読まれていないし、学校以外では学ばれてもいない。たしかに、保守派の批判するように、日本国憲法はワイマール憲法をはじめとした、世界の憲法の寄せ集めで、押しつけ憲法なのかもしれない。

そこには、西欧近代の人権と統治の概念が、幕の内弁当のおかずように詰まっている。実際、我々は戦後の70年以上も、このおかずを食って、成長してきてしまった。その事実、否定し難い。

日本国憲法とその下敷きとなる西欧政治思想、及び日本の伝統的な統治を支えてきた伝統的な儒教思想や仏教哲学、あるいは記紀神話を、コツコツ学びなおすことが、今の日本の政治風土には必要だ。私は、読書会活動を通して、メディアリテラシーの醸成、自由意思の余地の確保、アイデンティティの形成を図って、情報をシェアいきたい。そのヒントとなるのが渡瀬先生の本著作であり、アメリカの保守派の、憲法を使った読書会(P.73)であった。

(おわり)

読書会の模様です。

2020.4.13に行った渡瀬先生をお招きしての読書会の模様はこちらです。

  • 2020 04.21
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