百田尚樹『海賊とよばれた男』読書会のもよう(2018 10 5)

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2018.10.5に行った百田尚樹『海賊とよばれた男』読書会のもようです。

メルマガ読者さんの感想文です。

私も書きました。

『超国家主義の論理と日本民族資本の精神』

リストラも、定年もなく、タイムカードもなく、組合もなく、店主国岡への忠誠心と愛国心を原動力とする『国岡商店』が、試練を乗り越えながら、民族資本を蓄えていく話だ。この会社は、超国家主義的会社である。国岡鐡造は、日章丸をイランに送り出すときには、無事息災を願って、石清水八幡宮にひたすら拝むのである。幕末に攘夷親征だといって石清水八幡宮に祈願する孝明天皇に対して、十四代将軍家茂は風邪を理由に随行を拒否、「攘夷の節刀」を賜る予定だった一橋慶喜も、腹痛を理由にバックれるというお笑い話がある。将軍たちも天皇の神がかりに付き合いきれなかったのだろう。私は、神がかり経営で民族資本を蓄えようという発想は、超国家主義の残滓としか思えない。国岡は、戦後公職追放された。理由は、戦前の超国家主義者(上巻108P)だからだろう。国岡は軍国主義者ではなかったというが、どう考えても、超国家主義者である。国岡は社員の内面の倫理とか自己規律まで管理している。つまりは、ウェーバーのいう『プロテスタンティズムの論理と資本主義の精神』の亜種としての『超国家主義の論理と日本民族資本の精神』である。

労働法を軽視して精神動員を「企業家族主義」の美名で肯定するような会社が善たりえるのは、それは経営者側の理屈であって、労働者側の理屈ではない。せいぜい、海賊の理屈だ。国岡商店の成功の物語は、失われた20年で意気のあがらない企業経営者を鼓舞するパンフレットではあるが、それが、400万部も売れ、一般読者に支持されるのは、「う~ん」という感じだ。『ワンピース』のみならず、どんだけ、みんな海賊が好きなんだ。

フランス革命の歴史をたどれば、民族資本の蓄積がブルジョワ革命の原動力になるのは、明らかだ。民主主義。国民主権というのは民族資本の基盤がなければ、お題目に過ぎない。

しかし、民族資本といっても、超国家主義を精算しきれない戦後日本では、その民族資本は民主主義や国民主権の基盤たりえない。せいぜい政官財がファシズムまがいのコーポラティズムをおしすすめ「国難突破」のスローガンを国民に押しつけ、超国家主義に似た権威主義体制を粛々と築き上げ、政治体制の維持のために社会の脆弱な部分(女性・児童・高齢者)を『悪魔のひき臼』の犠牲にすることに目をつむり、神がかりな自己正当化で良心の呵責を克服する。そんなのが関の山だ。そんなことは、本書と石牟礼道子氏の『苦海浄土』とを比べて読めばわかる。

だが、そういう神がかりが日本の政治・文化と民族資本の核心であり宿命ならば、酒でも喰らってとことん私もその矛盾に付き合い、酔の勢いで「オラあ、海賊王になるずら」と叫ぶしかない。

核開発を進めるイランがロシア・中国と組んで覇権国アメリカのペトロダラー体制(石油のドル決済体制)からの離脱を画策し、中国が上海で元(ユアン)決済の原油先物取引を始め、石油市場の縮小から出光興産と昭和シェルと経営統合する時代になったのだから、戦後秩序はもうすぐガラガラポンだろう。日本の民族資本という概念自体が、変革を迫られている。

(おわり)

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  • 2018 12.15
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