アナトール・フランス『神々は渇く』読書会のもよう(2019 12 6)

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2019.12.6に行ったアナトール・フランス『神々は渇く』読書会のもようです。

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私も書きました。

「人間は徳の名において正義を行使するにはあまりにも不完全である」

エロディの父でブルジョワ商人のブレーズは、ガムランにこう忠告した。

(引用はじめ)

―――失礼ながら、一つ忠告させてくれ給え。君が生活の資をかせごうと思うなら、愛国的なトランプ札など描くのはよすのだね。革命の象徴だとか、ヘラクレスだとか、ヒュドラだとか、「罪」を追求するエリニュエスだとか「自由」の天才だとかを描くのはよすのだね。そしてきれいな娘たちを描くのだ。市民たちの世直し熱は時とともに冷えていくが、男はいつになっても女を愛するだろう。(中略)そして、よく頭に入れておくがいい、もう誰ひとり革命に関心を持っていないってことを、革命の話なんかもううんざりしているってことを。(P.47)

(引用おわり)

ガムランは真面目で純粋なために、革命の熱狂で我を忘れ、鬼神と化してしまった。革命裁判所の陪審員として、反革命分子に死刑判決を下し、ついには知人たちをもギロチン送りにする。「地獄への道は善意で舗装されている」という格言があるが、ガムランの善意は、たくさんの命を奪った。

選挙戦のさ中に子供を作る政治家が多いといわれている。清廉潔白なロベスピエールやガムランは、祖国と法に忠実だ。あくまでも忠実であろうとするあまり、人間性を踏み外すテロ(恐怖政治)に突き進む。この自己矛盾に、革命の本質が立ち現れる。

人は政治闘争の渦中に、オルガスムスに似た高揚を味わうという。革命の本質であるエロスとタナトスの物語るのは、祖国を愛するために人間性を踏み外したガムランに、そのためにいっそうエロディが、欲情させられていることだ。(P.239)

しかし、その高揚感は媚薬のようなもので長続きはしない。血の滴るステーキを食ったあと、しば漬けが恋しくなるように、世直しの熱が消えれば、みな卑俗な個人的生活に戻っていく。

「美徳と恐怖」で革命を前進させるという恐怖政治も、やがて倦怠に取り巻かれ、人は政治的安定を求めるようになる。「清廉潔白の人」ロベスピエールは、クーデターを予感し《私は深い謎のような不正の動きを蔽っているヴェールを全的に引き裂く決心はつかない。》と語った。非人間的な政治の怪物に化けてしまった彼らに、戻る場所はない。

ブロトが見抜いたように「最も血なまぐさい場面に最も卑俗な道化た場面を混ぜるシャイクスピアの或る劇(P.302)」のように、政治的怪物による権力行使は、道化芝居の筋書きに回収され、彼らは、墓穴に投げ込まれる。みんな政治にうんざりしている。野球場と芝居小屋はいつも満杯だ。

 (おわり)

読書会の模様です。

  • 2020 04.20
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