トルストイ『アンナ・カレーニナ(全)』読書会 (2019 8 16)のもよう

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2019.8.16に行ったトルストイ『アンナ・カレーニナ(全)』読書会のもようです。

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私も書きました。

『啓示される保守思想』

読了してみて、ロシアにおける自由主義と保守主義の対立を描いていると思った。フランス語を喋り、不倫を恥じないアンナやヴロンスキーら、リベラル貴族上流階級と、地方の農村で小作人とともに農地経営に悩むリョーヴィンら、地主階級の思想対立である。

日本の保守思想の核心は、稲作文化にある。今年の秋に大嘗祭が行われる。即位した天皇陛下がみずから田植えから刈りとりまで行い、収穫物を神にお供えし、天皇陛下も、神とともに一緒に食す。五穀豊穣を祝い、国家の安寧を祈る。これが日本の保守思想だ。そして、土地と労働が信仰の基盤であるという点では、ロシアの保守思想も同じである。

ここに日本人が、ロシア文学に親しみを覚える理由がある気がする。私は、イギリスの保守思想など、日本人に身につかないと思うが、ロシアの保守思想には、非常に親近感を覚える。トルストイが、日本でも尊敬され、広く読まれ、影響を与えているのは、日本人の素朴な信仰心に共鳴するものがあるからだと感じる。

倫理や道徳は、土地とそこに住む人々の暮らしと肉体を維持していくために、なくてはならない保守思想の要だ。労働者を搾り上げてもいけないし、甘やかしてもいけない。皆が汗を流して、共に働き、労働の喜びと収穫の喜びを分かち合い、神に感謝する謙虚さは、日本人もすでに持っている。

 「人間には、自分の肉体のためになくてはならないものを知ることが与えられていない」というセリフが、トルストイ晩年の民話『人はなんで生きるか』(岩波文庫版P.50)にある。アンナは最期まで、自分の肉体になくてはならないならないものが、ヴロンスキーの愛だと誤解していた。アンナの中にすでに与えられている、素朴な信仰は、ついに埋もれたままだった。アンナの悪夢にいつも出てくるフランス語をしゃべる百姓の袋の中には、啓示されるべき信仰があったのかもしれない。

毎日なんのために働いているのか? なんのために家族をなし、子育てをするのか? こういう問いは、知恵の傲慢さから生まれる問いだ。生きる目的は、神が用意している。その目的は、言葉で表現できない。与えられていてはいるが、必要に応じて、目的だけを頭から取り出し、抽象化するわけにはいかないのだ。落雷の中、必死に妻と子を守ろうとしたリョーヴィンのとっさの行動に、目的は啓示されている。

『おれ個人には、おれの心には、理性では理解し難い知識が疑いもなく啓示されているのに、おれはまだ執拗にこの知識を、理性や言葉で表現しようと望んでいるのだ。』(第8篇19章)

保守思想も道徳教育も、信仰や倫理や道徳に関わる。それは、言葉ではなく、実践の問題だ。自由主義は人間の生活を豊かにする。保守思想は、土地を通して、人間の魂を鍛える。日本の保守思想や道徳教育は、魂の問題なのだろうか。愛国や保守のためにする(排外主義的な)言葉は空虚だ。おのれが生活しているいまここで、足元を踏み外しているものに、保守思想が啓示されるわけがない。

(おわり)

読書会の模様です。

 

  • 2019 12.11
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