三島由紀夫『金閣寺』読書会のもよう(2019 3 29)

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2019.3.29に行った三島由紀夫『金閣寺』読書会のもようです。

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私も書きました。

『バイトテロ金閣寺』

『金閣寺』を久々に再読したあと、たまたま『ザ・ビートルズ』というドキュメンタリー映画を観た。1962年のデビューから68年頃までの活動の軌跡だった。当初は、19歳の若者が、生意気にはしゃぎまわるというコンセプトのアイドルグループだった(そのコンセプトは、今でもジャニーズのアイドルに引き継がれているのには驚いた!)。世界を席巻してから、公民権運動が激しかったアメリカ南部のライブで、白人と黒人の座席のゾーニングの撤廃を訴えたり、キリスト教を誹謗して、宗教右派にボイコットされたりと、既存の価値観に反逆する若者のアイコンになっていった。故内田裕也さんやドリフターズが前座を務めた初来日コンサートでは、「武道の聖地を汚すな!」という訴える右翼の街宣車が、武道館周辺に多数押しかけ、厳戒態勢となっていた。ビートルズの存在そのものが、音楽を通じての社会革命だったのだ。後期になって、スタジオ収録がメインとなり、哲学的な傾向を深めるに至った。ジョン・レノンは、禅にイカれて、オノヨーコと交際しははじめ、瞑想的な作風にシフトした。また、反戦運動にも積極的にコミットしている。

『金閣寺』は、1950年の7/2未明に吃音に苦しむ溝口という学僧が、朝鮮戦争勃発(6/25)の社会不安にあおられて、『金閣寺』の古典的な美と心中するために、放火するに至るという話である。金閣寺を偶像化するあまり極端な行動に惹かれていくという彼の心理プロセスは、ジョン・レノンを銃殺したマーク・チャップマンの破滅的なそれと一致する気がした。

また『金閣寺』を燃やすというのは、よく考えれば、究極のバイトテロである。バイトテロ金閣寺。

『金閣寺』に描かれているのは、個人オーナーの経営するコンビニFCのような宗教施設だ。まるで、コンビニ金閣寺だ。門の制札は、バイトマニュアルだ。正社員の約束を反故にされたバイトの溝口。彼の金閣寺放火の予兆に気づきながらも、温情からか。改心を信じてか、彼を解雇しない老師は、面倒見のよい観光資源の管理人ようである。三島先生は、現在にも続く戦後青年の精神荒廃を『金閣寺』を舞台にして暴いてみせた。

溝口の深遠にみえるような犯行動機は、所詮、青春期の生意気ざかりにはしゃいで、自由になりたいという鬱屈に、理屈をつけただけのように感じた。

溝口がもし10年後の高度経済成長時代青春期を迎えて、ビートルズでも追っかけていれば、尺八ではなくエレキギターを手にしていただろう。『美』ではなく、『自由』を追いかけただろう。そして、こじらせたあげく、結局は、来日したジョン・レノンを襲撃しただろう。しかし、なんで、三島先生は『自由』を語らず、『美』ばかり饒舌に語ったのか? 『自由』こそが、超越的認識の問題であり、美は、所詮は悟性と構想力(勝手気ままという意味での『自由』な想像力)の問題に過ぎないのに……

(おわり)

読書会のもようです。

 

  • 2019 05.09
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