
2017.11.24におこなった魯迅『阿Q正伝』読書会のもようです。
私も書きました。
「中国の近代化」
1911年辛亥革命によって、近代化を目指していた清王朝が崩壊した。中国の歴史は皇帝に天命が下るという易姓革命論である。今までの中国なら、清の宣統帝が天命から見放されたということであった。しかし辛亥革命は、天命そのものを否定する、人民主権の革命であった。満州人の王朝体制から、アジア初の共和国体制に変わり、近代国家としての中華民国が生まれた。しかし、庶民にとっては、政治体制の変化は何のことかわからない。
だから、革命指導者、孫文は、庶民に向けてわかりやすいように、明王朝への復古を説いた。薩長連合が朝廷を担ぎ上げて世俗権力=徳川幕府を倒した明治維新と同じ構図だ。
『白兜、白鎧』というのは、日本の『錦の御旗』だ。反満州人の意識があった漢民族の民族意識を政治利用して、復古を偽装しつつ三民主義(民族主義・民権主義・民生主義)のもと革命が進められた。
趙家も阿Qも田舎の人間である。城市に住むのが都会人だ。しかし、田舎に住もうが都会に住もうが、皆が辛亥革命の意味することをわかっていない。
その悲劇が書かれている。
近代の革命は、政治権力が人民に移ることだ。清王朝の支配階級は、急激に没落した。
《貧乏人?―― おまえはおれよりよっぽど金持ちだ》という阿Qの言葉に、趙白眼ががっかりするのは、革命によって彼らの財産が、没収されることを暗示している。
城内に住む挙人旦那は、清王朝の文官である。革命を恐れて財産を、趙家に隠した。
挙人や趙一族金持ちは、革命によって私有財産を失うことを恐れている。彼らは、革命分子である阿Qを恐れたのである。人民主権とは、阿Qの時代のことだ。
革命を騙り、略奪によって私腹を肥やす人間がいたため、阿Qも何も考えず、その一味に自然と加わったのである。
庶民の頭の中だけで革命が進行し、ならずもののテロルが横行し、国土が大恐慌《グランプール》を迎える。
あとは革命と反動のジグザグ時代だ。
何万人もの文字の読めない阿Qが革命運動に翻弄されて無駄死にしたのだ。
(おわり)
読書会のもようです。