2018.2.9に行った村上春樹『ノルウェイの森』読書会のもようです。
私も書きました。
「おいキズキ、ここはひどい世界だよ」
いままで、レイコが、嘘つきで、レズビアン中学生は彼女が自分で信じている創作話だというだという仮説で読んでいたが、今回、読み直して思ったのは、直子がレイコにとり憑いているのではないか? ということだ。もしかしたらキズキと直子の姉は何か関係があり、二人が肉体関係を持てなくなったのは、直子の姉に原因があるのではないか? そんなことも感じた。当人同士で完結した異常な三角関係があって、直子だけが生き残ったのではないか? そして、彼女は、今度はレイコとワタナベくんの三角関係に入っていく。
『源氏物語』で六条の御息所が、源氏と夕顔の枕元に立ったように、阿美寮に遊びに行ったワタナベくんの枕元に立ったのは、レイコに取り憑いた直子の生き霊ではないか? レイコと直子は、お互い深い共依存に入っており、お互いを食い尽くしている。ラストにレイコが死んだ直子の服を着て現れたのは、やはり、ありゃ、直子の怨霊だったのかもしれない。『源氏物語』で葵の上に取り憑いたのは、六条の御息所と、その親父の大臣だった。最後のレイコも、あらゆる物の怪をひきずって現れたような気がする。直子やキズキ、直子の姉、みんなの物の怪がびっしりレイコの体に取り憑いていたとしたら、ワタナベくんも…。冷や汗、冷や汗。
大学解体を叫びストを指導した学生連中が、スト破りして平然としている。良心の呵責を感じずに、やがて大企業に、就職していく。「おいキズキ、ここはひどい世界だよ」
『君たちはどう生きるか』のコペルくんが、北見くんとの約束を守れずに知恵熱を出すような煩悶などない。だとしたら、やっぱりひどい世界だ。
緑は、生の跳躍と言うべきパワーを秘めている。彼女は、春の熊のように生きている。彼女の自然は、物の怪を弾き飛ばす。
「私が怖いのはね、そういうタイプの死なのよ。ゆっくりゆっくりと死の影が生命の領域を蝕して、気づいたらうす暗くて何も見えなくなって、まわりの人も私のことを生者よりは死者に近いと考えているような、そういう状態なのよ」 第四章
(おわり)
読書会の模様です。